丈夫で飼いやすいのが特徴のフトアゴヒゲトカゲですが、様々な原因で病気になったり、けがをすることがあります。
ここでは、よく見られる病気や下痢などの気になる症例についてご紹介いたします。
フトアゴヒゲトカゲ病気11選
ここではフトアゴによく見られる病気の特徴、症状、検査、治療法などをご紹介いたします!
爬虫類の診療を多く手掛ける田向健一獣医師の情報をもとにしています!
フトアゴの病気1、内部寄生虫疾患
もし、大事なフトアゴちゃんが下痢をしたなら、もしかしたらそれは内部寄生虫疾患かもしれません。
内部寄生虫とは、主に消化器官に住み着く寄生虫の事です。
他の爬虫類と同じくフトアゴヒゲトカゲでもよく見られます。
どんなに健康に見えても糞便検査は大切です。
最も一般的な内部寄生虫はギョウ虫、コクシジウム、べん毛虫です。
ギョウ虫はアゴヒゲトカゲで最もよく見かける寄生虫ですが、病原性はほとんどないと報告されいます。
しかし、実際にギョウ虫の大量発生により衰弱してしまうケースも見受けられるそうです。
コクシジウムも一般的に検出されますが、無症状から重度の症状を呈するものまで様々です。
下痢が長期間続くと、いきみから脱腸を起こすことがあります。
コクシジウムはオーシストと呼ばれる卵のようなものを排泄し、それが糞便内に残り、糞便を摂取することで再感染します。
対処法
ベン毛虫は、ギョウ虫やコクシジウムと異なり、消化器症状を誘発することが多いようです。
病院では虫下しを投与します。
これらの虫下の投与を繰り返しても、なかなか根絶できないことがありますが、これもトカゲ自体に付着する糞便、あるいは放置された飼育環境内の糞便による自家感染が原因です。
虫下しを行う際には、トカゲの洗体と飼育環境の消毒が大切になります。
とにかく、飼育者は飼育ケージ内をいつもきれいに保つこと!!!
フトアゴの病気2、消化管閉塞
もし、フトアゴちゃんの排便がない!食欲もない。
そんな場合は、もしかしたら消化管閉塞かもしれません!
フトアゴヒゲトカゲは便秘をすることが多いようです(-_-;)
大抵は軽度の慢性的な脱水が原因で、総排泄腔に通称「尿栓」と呼ばれる尿酸の塊が詰まってしまいます。
そのようなフトアゴは決まってお腹のふくらみ、排便がない、食欲不振が見られます。
対処法
動物病院では軽度の場合、総排泄腔を洗浄した後、温水を浣腸することで尿や糞便の排泄を促します。
重度の場合には、補液、大量の浣腸、総排泄腔の潤滑処理と閉塞物の掻き出し処置が必要になります。
このような場合には、飼育環境の湿度を高めると同時に温浴を始めます。
消化管内閉塞は砂、砂利、クルミ殻などの床材の摂取によるものが一般的です。
下剤の投与でうまくいかない場合は、外科的に摘出する必要があります。
フトアゴの病気3、栄養性疾患
大事なフトアゴちゃんの体がなんか変形してきた?と感じたら、それは栄養性疾患かもしれません。
栄養性疾患で最も多いものに、代謝性骨疾患と言う病気があります。
この病気は一般的に「クル病」と呼ばれています。
対処法
原因は多岐にわたりますが、多くは食餌中のカルシウムが足りず、骨からカルシウムが溶け出すことで生じます。
結果的に骨の軟化、脱力感、食欲不振、脊椎湾曲が見られるようになります。
動物病院では、カルシウム、リン、尿酸の値を測定します。
軽症例ではカルシウムの投与に加え、食餌改善と紫外線照射などの環境改善で解決します。
しかし、血液中のリンと尿酸の値が高く、腎障害が疑われるケースでは慢性的な骨の痛みが続き、点滴などの適切な治療を行っても回復しないことが多いようです(-_-;)
フトアゴの病気4、生殖器疾患
フトアゴの難産や卵胞うっ滞と呼ばれる卵殻が出来る前の卵の元が停滞することは、メスのフトアゴで時々見られるそうです。
典型的な症状は食欲不振とお腹のふくらみで、痩せたメスでは卵殻卵と大きな卵胞を触診することが出来ます。
難産の原因は小さな骨盤、あるいは変形した骨盤、低カルシウム血症、骨盤より大きな卵殻卵、脱水、適切な産卵場所の欠如だと考えられています。
卵胞うっ滞の原因は完全に理解されているわけではありませんが、ストレスや不適切な飼育管理、あるいは感染によるホルモンサイクルの乱れによるものと推測されています。
対処法
動物病院ではレントゲン検査、超音波検査、血液検査などを行い診断します。
小さな骨盤や変形した骨盤の存在、あるいは大きな卵殻卵が存在する場合は手術が必要となります。
各種検査において異常が認められない場合は、補液、飼育環境の改善、適切な産卵場所の提供により解決することもあります。
低カルシウム血症のトカゲに対してはカルシウムの補充を行い、病的な症状を呈する卵胞うっ滞のトカゲに対しては、積極的な抗生剤による治療と手術が必要になります。
メスの中には排卵しない大きな卵胞を生じる個体もいますが、のちに自然に吸収されることもあります。
このようなメスは数週間、食欲不振になるので、この期間は体重と健康状態を細かく観察する必要があります。
フトアゴの病気5、眼疾患
フトアゴでよく見られる目の病気は、結膜炎と眼瞼痙攣を伴う角膜疾患です。
これらは感染症の後遺症、あるいは砂や異物による刺激に起因します。
対処法
動物病院では角膜を染色することで検査します。
角膜潰瘍が明らかになった場合、抗生物質点眼薬で治療します。
角膜潰瘍がない場合は生理食塩水で洗浄した後、消炎剤を含む点眼薬で治療します。
まれにみられる目の病気としては、眼球の裏側が腫れあがり、その結果、目が飛び出たようになる牛眼になることがあります。
原因の多くは膿の塊か高血圧です。
眼球の裏側に針を刺し吸引して得られたサンプルを検査します。
吸引サンプルに多数のヘテロフィル(爬虫類の白血球の1種、主に感染症の際に増加する)が認められ場合には感染を疑います。
吸引サンプルが血液に類似している場合には、さらなる検査としてレントゲン検査を行います。
その結果、大血管や心臓に石灰化が認められる場合は、高血圧が原因と考えます。
高血圧による眼球突出は両側に生じることが多く、膿瘍によるものは片側に生じることが多いようです。
フトアゴの病気6、皮膚疾患
皮膚疾患で最も多くみられる原因が最近と真菌です。
対処法
細菌感染は抗生物質療法で治療します。
真菌感染の多くは、抗真菌剤の内服や局所的なポピドンヨードの塗布やスルファジアジン銀の塗布で治療します。
真菌性皮膚疾患で注意すべきものの一つに、「クリソスポリウム」という真菌の感染によるイエローファンガス病があります。
この疾患は重度の皮膚壊死、黄色化が起こり肉芽腫を形成します。
進行すると根治させることが困難になります(-_-;)
フトアゴの病気7、ケガ
ケガは保温球や帆っとロックによる火傷や、ケージの壁に激突することで生じる鼻先の擦り傷が最もよく見られるそうです。
対処法
これは不適切な飼育環境が原因です!
熱源との距離、ケージの広さを見直す必要があります。
骨折は低カルシウム血症、ハンドリング時の落下によって生じることが多いようです。
ケンカ傷もたまに見られますが、適切な空間を用意すれば、一般的には起こりません。
フトアゴの病気8、腫瘍
フトアゴは爬虫類のなかでも腫瘍発生率が高いようです(-_-;)
皮膚腫瘍、内分泌腫瘍、造血器腫瘍、神経腫瘍など様々な報告がされています。
多くは死亡後の解剖検査にて判明します。
対処法
まだまだ治療法が確立されていないので、対処療法になる可能性が高いです(-_-;)
今後は生前診断と治療法の確立が望まれます。
ここでは誤飲や脱水などの症例を紹介します!
飼育時に注意することが重要で、日頃のケアが大切!
フトアゴの病気9、コクシジウム症
内部寄生虫疾患でも述べましたが、フトアゴヒゲトカゲによく見られる病気です。
対処法
糞便検査にて大量のコクシジウムが認められた場合、虫下しの投与と合わせ、総排泄腔の中心とする体の洗浄を行います。
体の洗浄を行う際は、温浴に身体にこびりついた糞便をふやかし、柔らかい歯ブラシなどを用いてウロコに沿って優しくこすります。
飼育環境の消毒は塩素を用いて1日1回行い、床材は使用しないようにします。
コクシジウムの完全な駆除は非常に困難ですが、症状が出ない程度にコントロールすることが大切です。
年に2回の糞便検査が推奨されます。
フトアゴの病気10、胃内異物
胃内異物とは、大事なフトアゴヒゲトカゲがビー玉など、食べ物ではないものや、食べてはいけない食べものを誤飲した場合の事を言います。
対処法
まずはX線検査にて胃の中の異物を確認します。
尾の裏側にある血管から麻酔薬を注射し、口から長い鉗子を用いて定期出します。
これは飼い主による不注意が大きな原因なので、口に入る大きさの床材やインテリアアイテムは飼育環境内に出来るだけ置かないようにするなどで予防出来ます。
フトアゴの病気11、腎不全
もし、大事なフトアゴヒゲトカゲちゃんが長期間、食欲が全くないような状態が続くようであれば、それに伴い脱水状態に陥ります。
まずは全くエサを食べなくなる前の段階、だんだん食欲が落ちてきたところで対処するのが望ましいです。
餌についての基礎を見直し、餌を食べなくなった場合の対処法をまず試してみて、それでも改善しないなら腎不全の疑いもあります。
餌を食べなくなった場合の対処法はこちら
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対処法
血液検査にて尿酸とリンの値と血液の濃度を測定し、その結果で腎不全か判断します。
もし腎不全だったら、骨髄留置という処置を行い、脱水症状を改善させると同時に、腎不全により進行した貧血に対して輸血を行います。
先ほども述べましたが、食欲不振に気が付いた時点でできるだけ早く原因を突き止め治療を開始することが重要!
フトアゴはあまり水を飲みませんが、水分を含んだ新鮮な葉野菜の給餌は非常に大切です♬
ここでは病気に関するお悩みのQ&A方式でご紹介します!
生後2年くらいになるフトアゴですが、初めて排泄後にトマトの汁のような排泄がありました。
生理でしょうか?
病気でしょうか?
A、これは、出血の可能性があります。(-_-;)
フトアゴの糞便は通常濃い茶色から黒色です。
また、爬虫類は子宮を持たないため、子宮壁が剥がれ落ちることで生じる生理は起こりません。
トマト汁のような色の排泄物は消化管や総排泄腔、あるいは腎臓や尿管のどこかで出血している可能性があります。
糞便検査、総排泄腔の視診、レントゲン検査、超音波検査、血液検査によって出血部位を出来る限り特定し治療します。
フトアゴのフンについての質問です。
下痢をしているときは、どんなケアをしてあげればよいですか?
下痢の時は、餌を与えてもいいのでしょうか?
A、慢性的な下痢に注意しましょう!
フトアゴヒゲトカゲが下痢をしているときは様々な原因が考えられます。
興奮させたり、怒らせたとき、あるいは長時間の温浴の後は過剰ないきみにより、まだ消化管内にとどまるべき糞便が排泄され下痢をします。
フトアゴの成体は草食傾向が強くなります。
嗜好性の良いコオロギなどの昆虫を1度にたくさん与えた時でも下痢をすることがあります。
注意しなければならないのは慢性的な下痢で、排泄する便が常に下痢である状態です。
このような場合には、糞便検査を繰り返し行い、寄生虫の有無を確認する必要があります。
同時に消化管に隣接する臓器、卵管や卵巣に異常がないか、消化管内異物がないかを確認します。
原因を特定後、治療を開始します。
消化管異物や他臓器の圧迫による消化管閉塞が認められた場合には、絶食させる場合もあります。
購入して間もない20㎝ほどの個体ですが、目ヤニが付いているようなのです。
ウィルスの感染による症状でも目やにが出ると聞きましたが、これは何かの病気でしょうか?
A、細菌感染や角膜外傷の可能性があります。
フトアゴに目ヤニが認められた時は、動物病院では目ヤニを採取して、顕微鏡検査を行います。
同時に角膜の傷を確認するために角膜染色も行います。
実際には細菌感染や異物による角膜外傷が多く、抗生物質の点眼薬で治療します。
ウィルスの感染は完全に否定することはできませんが、一般的な動物病院ではウィルス感染の有無を確認できないのが現状です。
買って1か月になる18㎝くらいのフトアゴなのですが、いつものように観察していて気が付いたのですが、足の一番長い指が変に曲がっているように見えます。
骨が入っているのかどうか不安です。
爬虫類を飼うのが初めてなのでわかりません。
クル病なのでしょうか?
カルシウムはD₃入りを毎日1回、コオロギ数匹にまぶして与えています。
A、まずはレントゲン検査をしましょう!
フトアゴは人と同じように前足、後ろ足に5本の指があります。
なかでも後ろ足から4本目の指は、他の指と比べ長いのが特徴です。
この指は他の指と比べ、ケージの金網や登り木にひっかかりやすく、飼育下ではケガや骨折が生じやすい傾向にあります。
まずはレントゲン検査で指骨の状態を確認すると良いでしょう。
ある報告では、成長期のフトアゴに必要なビタミンD代謝物の血中濃度は、紫外線を1日にわずか2時間照射しただけで維持されるのに対して、ビタミンDサプリメントの経口投与では、ビタミンD代謝物の血中濃度は紫外線照射の18分の1しか上昇せず、成長期には不十分であると結論が出されます。
多くの飼い主さんはビタミンサプリメントを好む傾向にありますが、成長期のフトアゴヒゲトカゲでは、ビタミンDのサプリメントには過度な期待はしないほうが良いかもしれません。
クリプトスポリジウムなど、原虫類に感染すると長生きできないと聞きました。
追加購入したいのですが、今いる個体への感染が心配です。
どんな症状があるのでしょうか?
購入時に感染しているか見分ける方法、感染予防方法などを教えてください。
A、まずは糞便検査!
クリプトスポリジウムはアピコンプレックス門に属する、とても小さな原虫です。
ヒトを含む脊椎動物の消化管などに寄生します。
トカゲ類に寄生して、病原性を示すクリプトスポリジウムは、2種類報告されています。
トカゲがクリプトスポリジウム症を発症した場合、食欲不振、体重減少、嘔吐および下痢などの症状を示し、だんだんと痩せてきて死亡することが多いようです。
動物病院では、診断にショ糖浮遊法を用いた糞便検査を行います。
検出感度が低いため、5回から7回検査を繰り返すことが推奨されいます。
同時に遺伝子検査、好酸菌染色を行うことで検出することもあります。
新しくトカゲを迎える際には、まず動物病院で糞便検査をしましょう。
感染が確認された場合は、隔離飼育が推奨されます。
フトアゴの病気でクル病が多いと聞きました。
どのような病気なのか教えてください。
またどうすれば予防できるでしょうか?
A、カルシウムの供給と紫外線照射が必要!
クル病とは代謝性骨疾患の別名です。
食餌中のカルシウムが不足していたり、紫外線照射量が不足している場合に発生する病気です。
骨からカルシウムが溶け出してしまうことで骨の軟化、脱力感、食欲不振、便秘、骨折、脊椎湾曲が見られるようになります。
毎日の食餌にはカルシウムを加え、爬虫類専用の紫外線灯を照射することが大切です。
フトアゴヒゲトカゲの病気 まとめ
いかがでしたか~???
なんか、飼育者の環境管理によって起こる病気が結構ありますね(;’∀’)
クル病なんかはズバリそうでしょう!
寄生虫なんかも飼育ケージ内を清潔にしていない、ウンチがフトアゴちゃんにこびりついたままにしておくなど、飼育者の落ち度での病気はなくしていきましょう!!!!
温度や湿度管理、餌、水やりなど、そして爪のケアも、色々必要です!
たくさん爬虫類やトカゲの基本を勉強して、フトアゴちゃんの為に役立てましょうね♪
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